全音楽譜出版社から出されている『リコーダー四重奏曲集6/モーツァルト・オペラアリア名曲選』に収録されているので、リコーダー・アンサンブルをやっている人なら、きっと一度は吹いたことがあるのではないでしょうか。
●恋とはどんなものかしら〜歌劇『フィガロの結婚』
若者ケルビーノのアリアです。ケルビーノは、思いを寄せている伯爵夫人たちの前で、こう歌います。“恋とはどんなものか知っている貴女たち、さあみてください、私が胸に恋を抱いているかどうかを…”。
もちろん彼は胸に恋を抱いているわけです。というか、ケルビーノの胸は恋心でいっぱいなのです。
それもそのはず、ケルビーノは恋に恋するお年頃なんです。……と、これは非常にきれいな言い方でして、端的に言えば、まあ、発情したオスなわけです(^_^;)。
その証拠に、彼は伯爵夫人に思いを寄せているだけではなく、フィガロの婚約者スザンナにも、庭師の娘バルバリーナにも思いを寄せるのです……。要するに、ご婦人と見れば見境なく“恋心”を抱いてしまうわけです。
まあ、思春期の男ってそんなもんです。そのリビドーの、混じりっけのない純粋さを私は信じています(^_^;)。
話が横道にそれました。
発情した若い男の、奔流のようなリビドーを表現するのに、こんなにも美しい曲を書いてしまったところに、モーツァルトの天才と悪戯心があると私は思います。
なに? モーツァルトに対して失礼?
いえいえ。モーツァルトが頂点を極めたオペラ・ブッファというのは、基本的に「お笑い」ですから、まずは「お笑い」として楽しむのがよいと私は考えます。
ところで、ケルビーノを演じるのはメゾソプラノなんです。つまり、女性が男性役をやるわけ。
すると、ケルビーノがご婦人に対して恋を語るような場面では、女性同士の、ちょっと倒錯した魅力も醸し出されるんですね。
はたしてモーツァルトがそこまで計算したのかどうか……うーん、私は計算したと思いますけど。
北御門さんのアレンジ(SATB)では、歌と伴奏がはっきりと分かれています。Sは歌い続け、ATBは終始一貫伴奏します。Sはいかに気持ちよく歌うか、下3声はいかにSに気持ちよく歌ってもらうかが演奏のポイントになりますね。
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